ひかりのまち
浅野 いにおの久々の新作、「ひかりのまち」をやっとこ読みました。
「素晴らしい世界」をはじめて読んだ時も、
衝撃というにはあまりにやさしい、ふわーっとした感動がありましたが、
今回のほうがずーんときました。
前作の1巻のほうが、状況的には過激な物語が多かった気もするのですが、
「ひかりのまち」のほうが、すごく刺さるものがありました。
この際、過激であるといことが強いとか、
心を動かすという小さい尺度は捨てるべきですね。
ちょっとト書きが多いのが間断される部分はあるのですが、
それは作者のていねいさであり、伝えたいことが伝わらないかもしれない
不安ゆえであり。
だからこそこの物語になくてはならないものだとも思います。
でも少年、少女たちの目線のそらし方1コマで、
かなり胸が苦しくなります。
一度つながらなくなったものを、
そのままに受け止めることしかできない不器用さと誠実さ。
そしてそれでも、だれかのやさしさで前ではなくても、
斜め前方向くらいに向かっていく彼らの明るさとたくましさに
思わず夢中になってしまいます。
何となく読んでいて「カナリア」のラストの少年の背中を思い出しました。
後ろ向きな自分ですが、
最近ちょっとこういうややこしい現実への執着と諦め、
全部を背負った上で、周囲から見てではなく、
自分自身がふわりと軽くなれるという状況を
いいな、と思えるようになってきました。