「リアルタイム・ウェブの現在とこれから」@ICC

連休最終日の前日。行ってきました。
正面スクリーンは前日同様Twitterハッシュタグ
左側スクリーンにはニコ生中継という雰囲気でスタート。以下メモメモ。

2010/05/04 @ICC
「リアルタイム・ウェブの現在とこれから」
伊豫田旭彦、大野真吾、千房けん輔、津田大介濱野智史、畠中実

まずは自己紹介。
□大野さん
2008年5月 world tour from My Room
Ustreamを使った演奏配信。世界各地の時間にあわせて演奏開始。
ロンドンではcalland responseもあった。
JAM session 
サイトにぺたぺたUstreamを貼り付け、セッションを行う。
8秒位ずれてるけどそれ風に聞こえる??

□伊豫田さん
ニコ生企画放送局
マス 小メディア?個人?
書籍 → ブログ同人誌
ラジオ → ぽどきゃす
テレビ → インターネット放送

インターネットの利点:
どこからでも放送ができる!
生放送が低コストでできる。
拍手したりっていうのが楽しい。
インターネットのおもしろさはコミュニケーション。それがリアルに見えてこなかったのが、2008ニコニコ会議で変わった。
友達と一緒に見ている、一緒に遊んでいるような楽しさがある。
2009年6月
「おいゆとり、明日泊めてくれよ」企画
リアルタイムで声や表情を見ると、信用ができるようになる。簡単につながることができる。
盛り上がりを可視化したりーラジコンで操作したりー。
「人生がコンテンツ」!

□千房さん
IZONN
AAAAAAAAAA×ボストークのウェブ部門
2009年12月24日
OKADADADA事変(自室からのDJプレイが衝撃的に盛り上がった夜)
みんなが投げ銭したがっていた
「ライブ感と投げ銭共有」
(路上のライブで人の投げ銭を見ているような感覚)
Ustreamとペイパルのマッシュアップサービス
ネットで共存していくような仕組みについて考える
=依存
USTREAMの視聴数字にリアリティがある」

□津田さん
Twittter中継
現場の発言を淡々とようやくして伝える。自分の感情が入るのは「中継」じゃない。ニコニコみたいなのは実況。

2007年5月31日から中継(実況風)開始
ICPFセミナー
喜んでくれる人が多かった。
記者として手離れがいい。
「週刊誌の未来を考える」イベント@上智大学で一気に認知があがった。JCASTが「tsudaる」というらしい、と記載。言葉ができて、やる人も増えた。

まとめるとTwitterとは…
・最速のジャーナリズム。
・テキストだからログにのこって検索で当たる。
・既存メディアがすべてのシンポジウムをフォローできているわけじゃないし。監視機能として底上げができる。
Ustreamやニコニコ中継の手間、コストにくらべるとぜんぜんお手軽!敷居が低い〜。
・旬の情報をTLでみると、身近のものとして受け取れる。メディアにのってからみるのとでは受け手の感覚が違う。
アジェンダセッティングへの展開
TSUDAるBOT!?」(濱野さん)


いよいよでぃすかっしょん開始
Q. リアルタイムウェブで何が変わりました?

Twitterをはじめて16歳になった(津田さん)
アクティブになった。盛り上がった反応がうれしくてもっと盛り上げたくなる(いよかんさん)
「心の声」が音声ではなくコメントになってきた(濱野さん)

Q. ニコ生とユーストの使い分け方法って?
ニコ生は匿名。ステージ。発表系。
ユーストは名刺交換をした会議みたいな感じ(いよかんさん)
終わった後に関係が継続するのがTwitter
続かないのがニコ生。匿名性よりも大きい違い(津田さん)

ニコ生のひとは好きじゃなさそう。ユーストのほうがフラットな感じ。ユーストやる人はこういう人たち、というのがない。ニコ生のほうがコミュニティ感がある。スティッカムもニコ生と同じようにカラーがあった(大野さん)

SNSがきてから、これまでのコミュニティは閉じている感じがあった。どこかに自分を合わせないといけない感じがあってしんどかった。Twitterは横につながった感じ。(千房さん)
ニコ生も内容によってくるひとちがいますよ(いよかんさん)
ニコ生くるーず。みたいなのもある。ハイパーリンクっぽい?(濱野さん)

こういうイベントで感じるのは、会場の雰囲気とツイッタの雰囲気に距離感がある。現実空間がバージョンアップしちゃってる感じがする。(千房さん)

小中学生は芸人さんがやってるからTwitter始めるってひとが多いらしい。芸人さんやアイドルとコミュニケーションをとりたいから。そもそもセレブのつぶやきみたいから、っていうのがあったから。(津田さん)

携帯のリアルは友人とのやりとりが目的。つながっていたい&距離感の確認? 読んでくれているみたいな反応を見ながら距離感をはかるのに使ってる?
「コンテンツはコミュニケーションに勝てない」っていう言葉があったけれど、神田さんが寝ているのを見ている状態とか、コンテンツなんかなくてよくて、つながっているという状態だけ。かつてのフラッシュクリエイターよりもいよかんさんみたいな人がスターになってきている。「人生はコンテンツ」みたいな人。この人見てると面白いね、がコンテンツになっていく。(千房さん、大野さん)

Twitterでネタになるものの外側にアートはいかないといけない?オンライン上のライブで見ることと、実際のライブ会場で見ることとの違いはなくならない?(大野さん)

ユーストもTwitterも「現場でみたいな」に訴求していく。140字でたりないものは外につながっていく。リアルの価値をあげていくためのツールになっていくといいと思う。(津田さん)

日常で満たされていない「だれかに聴いてほしい」はTwitterでは満たされなかった。深いコミュニケーションを求めてニコ生にいった。(いよかんさん)

匿名だからいえることってある。ダイヤルQ2みたいな。(濱野さん)

さみしさをまぎらわすことができるのがTwitterで、よりさびしくなっているひともいるしょう。(津田さん)

「リプレイ」
リアルタイムになると、自分を振り返ったり躊躇したりっていうのがなくなりそう。ワンセグみたいな4秒遅れるみたいな、リプレイがあると心地いい??

ほんとのリアルタイムだったら反射的な反応しかできない。多少のディレイがユーストもTwitterも存在している。(千房さん)

YouTubeのビデオブログも相当な進歩で早くなってる。ユーストでもはやくなって、4秒ディレイ。チャットルーレットはさらに短くなってる? 日本人はそこまでがつがつしたコミュニケーションにいかない?(大野さん)

リアルタイムがおもしろいっていうのは、感情の賞味期限が過ぎる前に反応があるから。それは1分以内くらい?(いよかんさん)

リアルタイムは1分以内??(津田さん)

いった先でも1分以内におもしろいことがないともどっちゃう。でも全体でユースト見てる時間は延びてる。(千房さん)

知識は情報は解決するけど、「幸せってなんだろう」とかは変わらないんじゃ。(大野さん)

悩みがコミュニケーションに勝てない?(濱野さん)

ニコ生の発信者の本心って? 芸人目指してなくても反応がほしいでしょ。(津田さん)
ここでちょっとごにょごにょ。

いろんな使い方があっていいでしょう、という話でまとまる。

Q. 未来の「リアルタイムウェブ」って?
Twittermixiボイスも、サービスの壁なくつながっちゃえばいい。プロトコルみたいな感じで。(津田さん)

音楽を売ることがむずかしくなるなかで、どうお金を得るのか。ライブ感も大事。ユースととかとの組み合わせでどうなっていくのか。(大野さん)

人とつながる、という欲求を満たした後のTwitterはどうなっていくのか。結局は「俺がここにいる」といえることがすべて? 肯定してほしいということ?
ドアをたたくとたたき返してくれるような感じ。(千房さん)

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途中ポメラの電池がいってしまい、抜けぬけでした。あとざっくり感想。

マスメディアの情報を待って受け取る、という状態から、情報自体がネット放送や個人の生放送から、フォローしている著名人の流す情報、気になっている人が今何をしているのか、どんな音楽を聴いているのかまで、多様化している昨今。
リアルタイムウェブはこういった情報のやりとりがどんどん即時反映かしていき、受け取る側も常時接続(実際は仕事してたりでみっぱなしってわけではないけれど)で、どんどん最新の情報を最大で受け取ろうと思えば受け取ることができる状態になってきた。

サービスは続々と生まれては過ぎてゆき、のせるコンテンツがついてこないまま消えていくサービスも加速度的に増えてきて、逆にサービスがコンテンツを加速化させるような人気サービスも続々と登場している。その浸透、衰退のスピード感も、2009年後半からこれまでの感覚を凌駕している。感じがある。

サービスの広がりはもちろん、わたしたちの生活自体も、これらのサービスとあいまって、忙しく高速化していっている感じがある。あれみなきゃ、これかかなきゃ、あれどうなってたっけ、と、「気になること」「気にすべきこと」が増え、「見逃したもの」も増えていく。後者に関しては、アーカイブが解決する問題でもあるだろうけれど、「アーカイブ」と「ライブ」の距離感も、広がったと感じる人、なくなったと感じる人がいるだろう。
ライブ行かなくてもモニタの前でコミュニケーションまで完結するじゃん、と思う人と、アーカイブになってしまう前のリアルを、現場で見ることへの重みが増す人。

今回の議論では範囲を広くもち、どれも一瞬かすめて次へ進んでいった感があるが、「ライブに意味を感じる」「現場の価値」みたいなものを、リアルタイムウェブ(今回でいうとTwitterやらUstreamやら)が台無しにしないという希望を抱くひとと、むしろ台無しどころかリアルタイムウェブ(今回の議論でいうとニコ生だったかな)が「上書き」してくれるところに達成感を抱くひとが、明らかに登壇者の皆さんのなかにも存在していたし、今リアルタイムウェブを使いこなしている人たちでも、意見が分かれるところだろうなと思う。

あまりここを深追いしないのは、ウェブの始まりである「自由さ」を壊したくないという無意識かの意識があるのかな、なんて思ったりする。いろんな使い方、かかわり方があり、どれを選ぶかは自由であること。そして何より、使っているのはひとりひとりの個人の判断と選択であること。

途中「文学が伝えていたであろう領域は、ニコ生のような情報の伝達で置き換わる」みたいな意見も出ていたが、もちろんそういう種類の層、使い方・かかわり方をする人たちも存在するだろうが、「それがすべてじゃない」ことが大事だと思う。
文学をすべて上書きするのではなく、文学の代替手段としてか、別の価値を見出す人もいるという事実があるだけだ。
何かを何かで置き換える、上書きするみたいな議論は、なんていうか、人生を取り返すための喧嘩みたいでなんとなく抵抗感がある。

ネットサービス側で働く人間として考えるべきは、これだけ多様化した情報のやりとりが存在する時代において、個人個人が自分にあった情報の伝達・受容方法を選択できる環境を作ることじゃないかと思う。
どんなに即時性の高いコンテンツがウェブ上にあがっても、それ自体に価値があるわけではなく、「求めている情報を求めているタイミングで求めている人に届く」ことがサービス提供者側のミッションであることは、実は何も変わっていない気がする。
多様化によって、むしろ「届いている人」と「届いていない人」の格差が生じたり、「情報の取得方法」に一律で「正義」みたいなラインができたりしている不自由が増えている状況を、もう一度見つめなおすことが必要なんじゃないかなと思う。

超個人的には、リアルタイムの早さとコミュニケーションの距離はなんとなく比例している感じがあり、常時接続でも自分がコミュニケーションに参加するタイミングはできるだけ減らすことで、人見知りなりの他者との距離感の境界を保ったりしている。

とまあ、ぐだぐだ書いちゃいましたが、とても面白いトークショーでした。
「リアルタイムウェブ」っていうテーマが合っていたかどうかは微妙ですが、「情報」のやりとりにおいて何かが変わろうとしていることへの、個々人の受容度・拒絶度みたいなものがこれからさまざまな側面で露呈するような予感を感じました。
登壇者の皆さんが、自分の言葉で語られていたからこそ、伝わってきた感じがあります。
わたしは、ライブ主義なので大野さんにすごい共感してしまいました。
説明よりも「人」の感覚で伝わることの強さと弱さも大事にしたいなと。

みなさま、おつかれさまでした!

追記:
アートの話はあまりなかったけれど、そもそも「作品を背景見てから解釈する」タイプと、「作品そのものとまず向き合う」タイプの鑑賞法があったりしますよね。
文学でいえば、作者の略歴や執筆時のバックグラウンド、評論なんか読んでから作品を読む。音楽でも「ミュージックマガジン」で萩原健太がこう書いてた、みたいなのを読んでからCD屋で買って聴く、みたいな。
ニコニコ動画って、コンテンツ見ながらこういった付加情報を同時に受容している感じに近いと思いました。これもまた、個人のスタイルであり、どの見方、聞き方、読み方が正しいとかはないだろうし、ただそれぞれが異なるプロセスと解釈をたどるということだけを互いに自覚していればいいんじゃないかなって改めて思いました。