「あんにょん由美香」@ポレポレ東中野

見に行ってきた。
監督・松江哲明さんの映画は「童貞。をプロデュース」とか「カレーライスの女たち」とか見たことあるんだけど、どうしても見た後にいらっとしてしまう。

氏が司会進行をつとめるドキュメンタリー系のイベントにも何度かいった気がするが、ドキュメンタリーについてあつく語られれば語られるほどさめてしまう。
なんでだろう。

でも豊田さんやカンパニーさん欲しさに足を運んでしまう自分もあれだ。


今回は林由美香さんの映画ということで、見ないと後悔する気がしたので鑑賞。



由美香さんは素敵だった。
いろんなひとが語る由美香さんは、豪快にみえて繊細でおひとよしでつけこまれてプライド持ってて職人でエロくてやさしくてわがままで脈略なくてさびしがりで凛としていて、本当に素敵な女性だと思った。改めて。
カンパニーさんがてれながら、まっすぐに、甘い声で由美香さんのことを語るのも素敵だった。


でも「あんにょん」部分がよくわからない。

由美香さんが出演していた東京ロケ・韓国製作の幻?のビデオを発見、なぜ彼女はこの映画に出たのか? を当時の関係者をたどりつつ明らかにしていく。

という作品なんですけど、ここからネタバレ。
由美香さんがなぜこの作品に出たのか、なんてもうだれにもわからない。
来るもの拒まずだったんじゃない? というひともいる。

韓国の製作者たちに会いに行ったところで、
彼らにとってもそんなに重要な必然のある作品でもなかったりする。
「意味なんてないよ」って韓国作品の監督は言ってるし、
通訳にそれを聞かされた松江監督も「えーーーまじ!?なんだよー」とか言ってるのに、
幻のラストシーンを撮ることが、ドキュメンタリーとして作品の核になっていく、
というのがもうぜんぜんわからなかった。

追っていったら様子が違ったならそこに固執することないんじゃないかと、
素人の自分は思ってしまう。


彼の作品を「ドキュメンタリー」のイベントで見た時の違和感はいつもここにある。

頭の中の筋書きとおりにきれいに撮られた映画になっているんだけれど、
そのきれいさがどんどんしらけていく。
さらに取材相手として登場する人たちにかなりの部分を依存していて、
彼らに歴史があったり(今回であれば、この韓国作品に出演していた男優のその後。
エロ映画に出ていたというレッテルを貼られ、さらに子供も生まれ、俳優をあきらめた挫折があった。とか)、
その歴史が観客の好奇をそそるほどに、作品として厚みが増すみたいな、、
撮るほうと見るほうのいやらしさにやられてしまう。
わたしもそのいやらしい見る側のひとりなんだけど。」


一度でも関係があって愛した人のことを、その喪失のあとに題材にして作品を撮るなんて、
相当ハードルが高いことだと思う。
取材対象として登場した、カンパニー松尾さんも、平野さんも、
それとなく、もしくはストレートに語っていた。


男女の愛なんて時に無責任なものかもしれないけれど、
俺の女のこと勝手に消化して描くならそれなりのものみせろよ、という男心はなんとなくわかる気がするのだ。


わかった、と応えた結果がこれだとちょっと悲しい。
予定調和みたいな作品は見たくなかった。
こじつけの思い出作りなんて、必要だったのかよくわからない。


韓国映画固執した以外のところは、よかったです。
特にカンパニーさんのところ。(しつこい)
あのカレー屋さんにいってみたい。


帰りに、会場で由美香さんを特集した「PG」という雑誌を買って一気読みしました。
文字を追っただけなのに、韓国作品以外の部分でこの映画に登場した周囲のひとたちの映像と、
すでにあたまのなかで混在してしまいました。


思いや言葉は、間接的な主観による映像よりも強いような気がした秋の夜です。