久しぶりに王子に遭遇

限りなく久しぶりに、
偶然、王子に遭遇しました。

王子がわたしに教えてくれたものは、良くも悪くも数え切れません。

この瞬間で果ててもいいと思えるほどの幸福感と、
幸福感が続かないことをいつも見据えてしまう人の弱さと強さ。

「君にいっつも電話をかけて眠りたい」
かたちにならない感情と、
「切りすぎの前髪」みたいにアンバランスな日常。

どんな強風もすり抜けられるような無防備な喜びと、
心の奥で物事に終わりがあることを知っている冷静さ。

変わらないものがないからこそ、強く、強くうたい、
覚悟という名のブルーを、否定し、のまれて涙を流すのです。

どれも悪いことじゃない。
でもどれも時に無性に憎たらしくなる感情。

操縦不能な感情から救ってくれたのも、また王子でした。

電車の扉脇に立ち「僕らが旅に出る理由」を聴きながら、
暗くなっていく空と一瞬で過ぎていく景色に、何度も何度も泣いたことを思い出す。
最後の最後に、東京の街を美しいと思える瞬間があったことも思い出す。

少し明るい夜の闇に、いろんな光がにじむ。
たくさんの人が暮らしているなかに、極めて小さな自分の日常がある事実。
受け入れることができることは、その先の何かを無視してもいいくらい幸福なことだという確信。

晴れた朝になって君が笑ってもいい。
移ろう天気や、街路樹の色。
小さな出来事に、ささやかな感情に、生きていることを感じる王子は、
やっぱり心のベスト10殿堂入りなのです。

2006年はなにかたよりがあるのかな。
いまもみんなを引き連れて「lovely」を熱唱した年の変わる日が
忘れられないのです。